日本庭園

この「日本庭園」のCGは制作して3年近くになる。基本設計の時に制作したものだ。おそらく、我が社がリアルタイムCGを設計で用いた第1号である。フランスのBionatics社の樹木ソフトを使ったのもこの物件からだ。このCGはパリの展示会に出して大変好評だったと聞いている。その後の実施設計でもプレゼンや植栽計画に活用した。

計画地は丘陵地にある高級住宅街の中央部に位置し、遠くに里山を望む場所にある。庭園のコンセプトは「市中の山居」と「借景」である。背景の里山を取り込みながら、周辺の住宅地への視線を遮り、山深い山居のたたずまいを感じさせる庭である。本庭は借景の山と庭を一体化させるために、大刈り込みを主体としたシンプルな構成とした。設計でのポイントは周りの住宅地を見せないようにしながら、山への視線を強調するという植栽計画だ。現場は造成もまだできていないし、既存の竹林が山への視線を遮り、現地での検討は不可能だ。そのため、植栽計画に当たっては基本設計の時に作成したCGを使ってシミュレーションを行うことにした。そのプロセスは以下の通り。

イメージスケッチ

1. イメージスケッチを起こす。

CGを使うとは言っても、設計の基本になるのは 手書きのスケッチである。これは変わらない。

 
背景の山、庭園の地形を作成し、樹木を配置

2. 背景の山、庭園の地形を作成し、樹木を配置する。

背景の山は50mメッシュで作成する。庭を見せる様々な位置(建物内や伝い等)から、山や住宅の見え方、庭自体のイメージを確認しながら木を植える。大刈り込みも現場と同様に1株ずつ植えていく。そして、木を動かす。木の大きさを変える。

 
3DCG平面図に変換

3. 3DCG平面図に変換する

シミュレーションが終わると、3DCGを真上から見て平面図として捉える。

4. 実施設計の図面にする

3DCGの平面図を工事発注用のCAD図面に直す。図面は味気ないが、これで設計が一通り終了する。

しかし、図面はあくまでも発注数量を確定することと、コンセプトを大まかに表現することしかできない。1/100での図面と原寸の現場では必ず違いがある。造園で大事なのは現場であり、現場にあわせて図面を変更できる感性が施工業者には求められる。その意味で、設計と施工との分離はものづくりに於いて決してプラスではない。しかし、現在の仕組みにおいては設計と施工とのつながりをよりスムーズにすることがすぐれた空間を作ることにつながる。

いずれにしろ、現地の詳細を確認できない段階での設計では、CGでのシミュレーションがより現実的な設計を可能とする。また、プレゼンテーションも明解で、クライアントとの合意形成も容易である。また、施工業者に設計のイメージを的確に伝えることができるのも大きな特徴である。

「日本庭園」VRを体験する。
日本庭園

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